- 月経以外で出血する「不正出血」
- 少量?一日だけ?
不正出血のセルフチェック - 不正出血の原因は?
- 不正出血で考えられる疾患
- ストレスのせいで不正出血が
起こる!? - どのぐらい出血が続いたら
病院に行った方がよい? - 不正出血の検査
- 不正出血の治療
月経以外で出血する
「不正出血」
不正出血とは、ホルモンの異常、婦人科疾患を中心とする病気によって、月経以外で起こる出血のことを指します。専門的には不正性器出血と呼びます。当ホームページでは不正出血と呼ぶことにします。生理不順やおりものの異常と同様、婦人科を受診する主訴になることの多い症状です。月経以外で大量の出血がある場合はもちろん、月経中以外のおりものに少しだけ血液が混じっているといった場合も、不正出血に当てはまります。病的でない不正出血もありますが、自己判断せず、必ず当院にご相談ください。
生理の出血と
不正出血の違いは?
量、色、においなどで生理の出血と不正出血を見分けることはできません。不正出血に加えて何らかの症状がある場合だけでなく、不正出血が単独で認められる場合も、受診が必要です。
少量?一日だけ?
不正出血の
セルフチェック
特によく見られる不正出血をご紹介します。月経期間以外に以下のうち1つでも当てはまる場合、不正出血かもしれないと感じた場合には、受診をおすすめします。
- 真っ赤な血液が出た
- 下着に微量の血液が付着していた
- おりものに血液が混じっている(茶色いおりもの)
- かゆみ、痛みといった他の症状を伴う出血
- ピンク色、黄色など判断に迷う出血らしきものがあった
- 閉経後に出血があった
- 不正出血のようなものがあったが、1日で治まった
不正出血の原因は?
不正出血は、その原因によって以下のように分類されます。
器質性出血
何らかの病気を原因として起こる不正出血です。子宮、腟、卵巣などの婦人科の疾患が中心となります。子宮頸管ポリープがある場合には、性交時の出血が見られます。
機能性出血
主に、ホルモンバランスの乱れを原因として起こる不正出血です。ストレスを原因としてホルモンバランスが崩れ、不正出血につながるケースも見られます。
中間性出血
生理期間と生理期間の中間にある排卵を原因とする不正出血です。基礎体温を記録し、排卵のタイミングでのみ不正出血があることが確認できた場合には、病気の可能性は低くなります。
その他の出血
着床出血、妊娠中の出血、外傷などを原因として、月経以外に不正出血が起こることもあります。
不正出血で
考えられる疾患
子宮・腟・卵巣の病気、妊娠中の病気として不正出血の原因となるものをご紹介します。
子宮の病気
子宮筋腫
子宮に良性の腫が生じる病気です。
腫が大きくなると、不正出血、生理痛などの症状が現れます。
子宮内膜ポリープ
子宮にできる良性のポリープです。多くは良性ですが、子宮体がんとの鑑別が欠かせません。ポリープが大きくなると、不正出血、過多月経、貧血などの症状が現れます。
子宮体がん
初期症状として不正出血が見られますが、認めない場合もあります。その他の症状としては、血液のまじったおりもの、月経量の増加などが挙げられます。
子宮腺筋症
子宮平滑筋が肥厚する病気です。不正出血、過多月経、下腹部痛、腰痛などの症状が見られます。
子宮内膜増殖症
子宮内膜の過剰増殖により内膜腺が増殖し、不規則な形態を示す病気です。多くは元に戻りますが、一部は子宮体がんへと進行することがあります。このため子宮体がんの前がん病変とされています。典型的な症状として、不正出血が見られます。その他、過多月経、過長月経が長くなることなどの症状を伴うこともあります。
子宮と腟の病気
子宮頸管ポリープ
良性であれば多くは経過観察に留めますが、スポーツ、性交によって不正出血の原因になります。また、子宮頸がんがポリープのように認められることがあるため、検査が必要です。
子宮頸がん
性交を一度でも経験した人は、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスに感染している可能性があります。子宮頸がんを発症した場合には、不正出血、性交時出血、下腹部痛などの症状が見られます。
子宮腟部びらん
子宮口を中心とした場所が赤く見える状態のことです。原因にはエストロゲンが関わっていると言われています。不正出血、性交時出血、おりものの異常などの症状が見られます。子宮頸がんとの鑑別が重要です。
腟がん
不正出血、おりものの異常、性交痛、排尿時痛、腟内のしこり、便秘などさまざまな症状が見られます。ただし、初期には無症状であるケースも少なくありません。
卵巣の病気
卵巣腫瘍
良性のものと悪性のもの(卵巣がん)があります。無症状であることがほとんどで、腫瘍が大きくなるといずれの場合も、下腹部痛、頻尿、腹部膨満感などの症状が見られます。
卵巣機能不全
ホルモンが正しく分泌されないことで、不正出血、月経周期の乱れ、無月経といった症状を引き起こします。
妊娠中の病気
流産
子宮内容物が体外へ排出されることです。流産の症状として不正出血や腹痛が認められることがあります。出血は時に大量になります。
異所性妊娠
いわゆる子宮外妊娠です。不正出血、下腹部痛などの症状が見られます。対処が遅れると、大量出血やショック状態に陥ることがあります。
ストレスのせいで
不正出血が起こる!?
ストレスを感じると、副腎からコルチゾールというホルモンが分泌され、女性ホルモンであるプロゲステロンの分泌が抑制されます。これによりホルモンバランスが乱れ、不正出血が起こることがあります。ただし、ストレス由来だと思っていたら実は病気による不正出血だったということもあります。気になる場合には、放置せず当院にご相談ください。
どのぐらい出血が
続いたら病院に
行った方がよい?
結論から言いますと、「一度でも不正出血があれば、婦人科を受診してください」ということになります。病気を原因とする不正出血であっても、たびたび出血があるとは限りません。身体からの異常のサインと捉え、明らかな不正出血はもちろん、不正出血かもしれないと感じた時には、お早めに当院にご相談ください。
不正出血の検査
不正出血で受診された場合には、必要に応じて、以下のような検査を行います。
内診
使い捨てのグローブを着用し、医師が腟、子宮、卵巣の状態を調べます。
血液検査
女性ホルモンの分泌量を調べたり、貧血の有無を調べたりするのに有用です。
おりもの検査
不正出血の原因として感染症が疑われる場合、おりものの細菌の有無を調べます。
性感染症検査
クラミジア・トラコマチス、淋菌などへの感染が疑われる場合に行います。
妊娠反応検査
妊娠の可能性がある場合に行います。
子宮がん検査
子宮頸がん、子宮体がんの可能性がある場合に行います。
経腟超音波検査
腟内に機器を挿入し、超音波で子宮、卵巣の状態を観察し、腫瘍の有無などを確認します。
不正出血の治療
ホルモンバランスの乱れやストレスが原因と考えられ、出血が少量であれば生活習慣の改善のための指導を行いながら、経過観察します。出血量が多い場合には、ホルモン剤を処方し、ホルモンのバランスを整えます。検査で何らかの病気が見つかった場合には、その治療を行います。検査で原因を調べ、その原因に応じた治療を行うことで、症状の改善が期待できます。特に排卵出血であった場合は、排卵抑制のためにピルを処方することがあります。