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卵巣腫瘍

卵巣腫瘍とは

卵巣腫瘍とは

まず腫瘍とは良性・悪性も含めて、袋状に腫れているものを腫瘍と呼びます。卵巣は通常2-3cm程度の大きさですが、これが腫大したものが卵巣腫瘍です。大きいものではお臍のあたりまで大きくなることがあります。卵巣腫瘍はその起源から①上皮性腫瘍②性索間質性腫瘍③胚細胞腫瘍④その他の腫瘍に分類されます。それぞれに良性腫瘍・境界悪性腫瘍・悪性腫瘍があります。卵巣腫瘍の種類はとても多彩です。
また卵巣には類腫瘍性病変と言われるものも存在し、妊娠黄体、黄体嚢胞、偽嚢胞などが挙げられます。

卵巣腫瘍の原因

発生原因の多くが未だ解明されていません。わかっていることとして、良性卵巣腫瘍の一種である卵巣チョコレート嚢胞は卵巣内で子宮内膜様組織が発育して出血を繰り返すことで発生すると言われています。また悪性である卵巣癌 (悪性の卵巣腫瘍を卵巣がんと言い、その中でも上皮性のものを卵巣癌と言います)は妊娠・出産経験が少ない方、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症の方が発生するリスク高いとされています。排卵することで、卵巣上皮の破綻と再生を繰り返し、これが遺伝子変異に繋がり、卵巣癌のリスクになると言われています。また子宮内膜症は悪性化し、明細胞癌や類内膜癌になることがわかっており、特に40歳以上、嚢胞径が10cm以上の方は注意が必要です。

卵巣腫瘍の症状

卵巣腫瘍の症状

良性でも悪性でも卵巣腫瘍が小さい場合、症状はほとんどありません。健診などでたまたま見つかることが多いです。大きくなるとお腹が出てきた、体重が増えたと訴える方がでてきます。それでも最初は婦人科だと気付かずに、内科を受診し発覚することもしばしばです。例外ですが、性間質性腫瘍のうちのホルモン産生腫瘍はホルモンによる不正性器出血などの症状が初期からみられることがあります。卵巣がんで進行してくると、腫瘍増大により食欲不振、悪心などの消化器症状や腹部膨満感、頻尿、腹水貯留などが認められるようになります。良性であっても気を付けることは卵巣腫瘍の茎捻転や破裂です。どちらかというと悪性より良性のほうに起こりやすいと言われています。卵巣がんは進行すると癒着といって、周囲の組織とひっついて、動きにくくなるからです。逆に良性卵巣腫瘍は周囲とのくっつきがないため捻れやすくなります。卵巣は、靭帯という太いひも状の組織でぶらさがっており、ある程度の大きさになると靭帯部分で捻れやすくなります (茎捻転)。 茎捻転により卵巣への血流が途絶えることで、突然の下腹部痛が起こすことがあります。「〇時〇分に動けなくなるくらい痛くなった。」といった具合に、発症時期が明確であることが多いと言われています。悪心や嘔吐だけのこともあります。原因で最多なのは成熟嚢胞奇形腫です。治療には緊急手術が必要な場合があります。

卵巣腫瘍の検査

卵巣腫瘍が小さい場合、内診では判明しないことが多いですが、経腟超音波検査で比較的容易に診断ができます。良性、悪性の鑑別は腫瘍が嚢胞性か充実性か、単房性か多単房性かなどが重要です。悪性を疑う場合はMRI検査などで精査をしていきます。また血液検査で腫瘍マーカーを測定し参考にしますが、腫瘍マーカーが陰性だからといって悪性腫瘍が否定できるわけではありませんし、また良性腫瘍であっても子宮内膜症性嚢胞や成熟嚢胞奇形腫は腫瘍マーカーが上昇することがあり、腫瘍マーカーが陽性だからといって必ず悪性腫瘍であるとも限りません。あくまで腫瘍マーカーの測定は補助診断であり、最終的な確定診断には手術による腫瘍切除により病理学的に組織診断をしないとわかりません。

卵巣腫瘍の治療

卵巣腫瘍の治療

卵巣腫瘍の治療方針は良性か悪性かで変わってきます。良性腫瘍が推定される場合は定期的に診察を行い、増大傾向がないかなど経過を見ていきます。腫瘍の大きさがある程度大きい場合は茎捻転や破裂のリスクも高まってくるため予防的に手術療法も考慮する場合があります。その場合、手術前に明らかに良性腫瘍と考えられる場合は腹腔鏡下で手術を行うことが主流となっています。妊娠黄体などの類腫瘍の場合は自然消退する可能性が高いため経過観察することもあり見極めが大切です。一度の診察でその見極めを行うことは難しいことも多く適切に経過観察することが重要です。また卵巣チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞)は手術療法だけでなくホルモン療法も主体となってきます。悪性腫瘍の場合の治療は、化学療法や手術療法、放射線療法の組み合わせになります。ここでは割愛します。当院で卵巣腫瘍がわかった場合、個々に対応していきます。手術が必要な場合は近隣の病院をご紹介致します。また、経過観察の場合は3~12ヶ月の間隔で経腟超音波にて観察していきます。経過観察期間は患者様によって個別に判断します。